それはある日の昼下がりでした。
フラワーショップの方から家に入った
カンガルーちゃんはびっくりしました。
「ただい・・・・・・・え? お父さん、どうしたの?!」
カンガルーのお父さんは背中を出して痛がっていたのです。
カンガルー妹ちゃんが痛い所を触って、
湿布を貼ってあげようとしていました。
「あっ、お帰り。アカシカちゃんとお出かけは楽しかったか?」
見られてしまったかと、気まずそうなカンガルーのお父さんです。
「うん、楽しかったけど・・・それより、お父さんどうしたの?!」
「その・・・実は、背中を痛めてしまってね・・・。
頑張って、遊び過ぎてしまったらしい」
「・・・・遊び過ぎた??」
怪訝な顔をするカンガルーちゃんです。
カンガルーのお父さんは話し始めました。
☆★☆★☆★☆★
それは二日ほど前。
カンガルーのお父さんは村発展の為に
幼稚園を開園する事を思い付きました。
しかし、あの困った管理人。
村に何人の赤ちゃんがいるのか教えてくれませんでした。
『う~ん、分からないから、カンガルーさん数えといて♪』
と言い残し去って行ってしまったのです。
困ったカンガルーのお父さんは一ヶ所に
赤ちゃん達を集める事にしました。
色んな人に協力してもらって、その話は広まり、
今日がその集まる日だったのです。
赤ちゃんの人数を数えてもらう為に、
アヒルのお父さんに協力してもらう事になりました。
「アヒルさん、今日は宜しくお願いします」
「いえいえ、大丈夫ですよ。数えるだけですから。
三つ子も連れて来ましたよ」
「ありがとうございます。これで三人・・・」
次にやって来たのは仲良しの二人でした。
「カンガルーのおとうしゃん、こんにちはです♪」
「こんにちは~」
「こんにちは。来てくれてありがとう♪」
チワワの赤ちゃんとラベンダーウサギの赤ちゃんでした。
「これで、五人・・・」
その後も続々と、赤ちゃん達はやって来ました。
ところが、大人が二人もいるのに
カンガルーのお父さんとアヒルのお父さんは
何人いるのか分からなくなってしましました。
「・・・・途中まで数えていたのに・・・。アヒルさん分かりますか?」
「申し訳ありませんが、子供達に気をとられて・・・」
頭を深く下げるアヒルのお父さん。
カンガルーのお父さんは慌てて言いました。
「だ、大丈夫ですよ!みんなに並んでもらって、数え直しましょう」
「そうですね」
「それでは、みんな。一列になってごらん」
ざわつく赤ちゃん達です。
「いちれつって、なんでしゅか?」
「おじちゃん!くさぬいたよー」
「ねえねえ、あたちのうたきいて♪」
「まま・・・どこ・・・?」
全然、話を聞いてくれません。
「・・・困ったなぁ・・・。一体どうすれば・・・」
頭を抱え込んだカンガルーのお父さんに
一人の赤ちゃんが抱きついてきました。
「おじちゃん!あそんで!」
「えっ?!!」
その言葉をきっかけに赤ちゃん達が
「あそぼう!」「あそんで!」と騒ぎ出しました。
あっという間にカンガルーのお父さんとアヒルのお父さんは
赤ちゃん達に囲まれてしまいました。
「ま、待って!まだ数え終わって・・・!」
「おじちゃん、かたぐるまして!」
「おままごとしてくだしゃい!」
「すべりだいしようよー」
「ブランコがいいよー」
「あたちのうたきいて!」
こんな人数に囲まれては身動きがとれません。
「カンガルーさん、これは遊んであげないと数えられませんよ^^;」
「そうですね。アヒルさん、遊んであげましょう!」
そして、大人二人は一時間ほど赤ちゃん達と遊んだのでした。
☆★☆★☆★☆★
「だから、背中を痛めちゃったのね」
カンガルーちゃんは話を聞き終わり、納得しました。
「あんなに遊んだのは、お前達が赤ちゃんの頃以来だよ。
うちの末っ子はまだあんなに遊ぶ年齢ではないからね」
久しぶりの赤ちゃん達の遊びに
カンガルーのお父さんはとことん疲れてしまったようです。
「それで人数は分かったの?」
「・・・・それが、遊びに夢中で数えず、帰らせてしまったんだ(^^;」
呆れ顔のカンガルー姉妹です。
カンガルーのお父さんは一生懸命だけど、
いつもどこか抜けています。
「あなた。村発展に一生懸命なのも分かりますけど、
あまり無理しないで下さいね。
家族みんな心配しますよ」
ずっと見守っていたカンガルーのお母さんの言葉は
カンガルーのお父さんをとても気遣っていました。
カンガルーの末っ子ちゃんも心配そうにしていました。
「・・・ごめん・・・なさい」
カンガルーのお母さんには
頭が上がらないカンガルーのお父さんでした。
その後、数えられなかった事を管理人さんに報告しました。
結局何人なのか問い詰めたところ、
『多分・・・20人くらい?』と言う答えでした。
カンガルーのお父さんはリベンジを誓うしかありませんでした。
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